交通インフラと旅行(山、温泉)

旧タイトル:静岡空港と常温核融合を応援するBLOG

フィリピンのクラーク(ディオスダド・マカパガル)空港に学ぶと

フィリピンのマニラ国際空港(ニノイ・アキノ国際空港)は、拡張の余地なく離着陸回数に能力が追いつかず、限界に達しているのだそうだ。筆者はまだフィリピンに行ったことはないが、WEB情報を総合すると、搭乗2時間前に空港に着くと、中に入れない、トランジットのみの利用であってもいったん入国しなければならない とか、空港の使い勝手に非常に問題が出ているようだ。

一方、マニラ空港から車で3時間ほどの距離にあるクラーク(ディオスダド・マカパガル)空港は、空港の混雑が少なく、エアアジア、セブパシフィックなどLCC拠点空港として成長しつつある。メイン滑走路は3200m 2本もある。日本からの直行便は運航していないが、ソウルなどでのトランジットで行ける。ソウルからクラークに運航しているのは、アシアナとジンエアー。

マニラ空港とクラーク空港をスムーズに連絡する交通システム(モノレール?)建設の話も持ち上がっており、クラーク空港は、日本でいえば、東京と茨城空港静岡空港のような位置関係にありながら、重要性・成長性でははるかに上を行っている。

このクラークに学んで、静岡空港を活性化できるか?を検討してみると、3つのポイントが見えてくる。

(1)クラーク空港周辺地域が客を呼び込む能力
クラーク経済特別区:1991年に米軍クラーク空軍基地が返還された後、1993年に経済特別区と指定され、空港、ホテル、ゴルフ場、カジノ、免税店、国際会議場などがある(Wikipediaの記事に基づく)。
このような経済特別区静岡空港周辺に立地するという話なら(実現の可否はともかくとして)静岡県側の関係者は大賛成だろう。一方、クラーク空港周辺の都市、アンヘレスは、リゾート都市というよりも盛り場(ゴーゴーバーなど)として有名だ。このような遊興・快楽を訴求する盛り場を静岡空港周辺に立地させるという案は、経済効果は誰の眼にも明らかながら、実現には大きな抵抗があるものと思う。

(2)国内線とのアクセス
クラーク空港は、フィリピン国内線にアクセスするポイントとしても重要な位置づけを持っている。一方、静岡空港は、ソウルまたは上海と静岡を結ぶ国際線と、静岡・札幌線(ANA)のトランジット空港として利用できなくはないが、そのような利用の実例はきわめて少ないだろう。
フィリピンは島国であり、島と島を結ぶ海底トンネル・新幹線の計画など全くないことから、今後も航空機・船舶が国内交通の主流であり続けることは確実だ。日本も島国であるが、新幹線の延伸によって、国内航空需要が影響を受けている。さらに、セブパシフィック航空のフィリピン国内線の料金を見ると極めて安い(1000円でお釣りが来るような)。フィリピンの国内線の現状になぞらえば、今度日本に設立されたピーチなどは、関西空港を拠点とするのではなく、例えば、高知・静岡、松山・静岡などに極めて低廉な料金で就航し、高知から東京に行きたい人は、静岡まで安く飛んだ後、静岡・東京間は低料金のバス(あるいは東海道本線に普通運賃だけで乗れる快速列車を走らせる)で・・・というのが本来あるべき姿だろう。しかし、このような案はピーチの親会社の高知・羽田線、松山・羽田線の収益を害する恐れがあり、実現は難しいだろう。もし、実現するとしたら、大手の子会社ではない独立LCCによる路線開設のほかない。

(3)近隣アジア諸国に近い
この点がクラーク空港の大きなメリットだ。マレーシアから、香港から・・どんどん飛行機が飛んでくる。一方、静岡空港は、マレーシアや香港からやや遠いという点が路線開設上でデメリット。香港やマレーシアの航空会社としては中型・大型の機材を丸一日日本への往復に供出するのであるから、その機材を毎日ほぼ満席にしてくれるような需要がないとペイしない。2015年頃になると小型で航続距離の長いA320neoのデリバリーが始まるから、東南アジア地域・静岡の路線が開設しやすくなるかも知れない。当面は、静岡空港としてはソウル線の増強(アシアナや大韓に加え韓国のLCCも?)をメインに、中国、台湾、グアムなど近隣国への便の開設・増強で頑張るのが適切と言えるだろう。
もうひとつ重要なポイントを付け加えるとすれば、・・・国内の就労機会に乏しいフィリピン人は国外での就労をいとわず、例えば中東のUAEサウジアラビアなどではかなりの人数のフィリピン人が働いているということだ。フィリピン人の海外に出てゆく気概は、フィリピン発着国際路線の維持・発展の大きな原動力になっている。日本には飛んでこない、ガルフエア(バーレーンの航空会社)などもフィリピンには飛んでくる。イベリア航空も、成田線から撤退した後もしばらく、香港経由マニラ行きを飛ばしていた。静岡人ももっと積極的に海外に出て行くようになれば、静岡空港の力強い発展が磐石なものとなる。